2010年1月30日土曜日

『建築をめぐる22の寓話』トピック06


エヴァよりイデよりマジンガーZ


生活の中でデジタルコピーが安易に出来るようになって、結果、つくりだされるモノが洗練さをまといながら、その意味や重さ・実体感が希薄になってきたように思う。


オリジナルの持つ強烈さは、その洗練さとともに失われていくのだけれど、遺伝子がくりかえしくりかえし複製されていく中で突然変異が起こるが如く、オリジナル以上の強烈さを放つ「何か」を持った作品が生まれてくる時がある。「何が」そうさせるのかはさまざまな見方があるだろうけれど、パイオニア以降に求められるのはそういった「何か」ではないか。


たとえば、人が乗り込んで操るロボットが主人公のアニメ。その作品はあまたあるけれど、おそらく原点、パイオニア的な存在は永井豪原作の『マジンガーZ』だと思う。その後、勧善懲悪的なロボットアニメ作品がたくさん花開いて、やがて富野由悠季(喜幸)作品の『機動戦士ガンダム』が現実社会の戦争というテーマを巧みに取込みながら、どちらかというと勧善懲悪ではない新たな人間ドラマへと展開していった。そして、最近で言えば(と言っても15年前の作品だけれど)庵野秀明作品の『新世紀エヴァンゲリオン』が人間の内面の葛藤、不可侵の宗教感を背景にした物語を描き、現在に至っている。


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で、もうひとつはオリジナルへの回帰がある。それは閉塞する現況を打破するため、あえて原点へ立ち戻ることを意味する。


山田洋次監督の最新作『おとうと』は『男はつらいよ』第1作とほぼ同じシノプシスだ。違うのは兄と妹が姉と弟となっていることと、弟が死んでしまうところにある。家族・人情を描くためのオリジナル回帰の作品だと感じている。ただこれは原点へ立ち返る行為なのか、ただ単に粗悪なコピーで終わるのか、とても難しい手法だと思う。


建築というジャンルを見渡して、今、例えて言えば、こぼれた水のようにひろがっていく感のある状況を、僕自身はあまり心地良く思っていない。

デジタルコピーの、素数や要素を条件として明示し、アッセンブルする手法だけでつくられる作品には中見が見えないからだ。


突然変異か、原点回帰かを希求する環境になっていると考えている。



文責:筑波幸一郎-02003


2010年1月29日金曜日

『建築をめぐる22の寓話』トピック05


やっちゃった感


ある建築家から私に向けられた言葉である。


私自身が建築を「つくること」に飢えているが故に、生み出す建築に自分の過去をトレースするように盛り込んでいく。そうすることで饒舌になっていく私の姿、あるいは私の生み出す建築に警笛を鳴らしてくれたのだ。


建築は場当たり的な手法にとらわれず、今の時代今の社会にどう関わりどう広がっていく可能性があるのか。これを真摯に考えて取組んでいかなければ、自身が時代に消費されていくのだと気づかされたエピソードだ。

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思い返してみれば、建築を目指し始めたあの頃から「建築に何が可能か」なんて考えながら、卒業設計やコンペに取組み、務める事務所の仕事に恣意性や施主性の高さを感じれば「なんでその形なのか」「理不尽に迎合するな」と反論し、自分なりに「建築はこうである」のようなことを考えていた。


いざ、今の自分を振り返ってみれば、経済という大きな力に負けそうになり、施主というありがたき存在に負けそうになっている自分を見つけることができる。それでも建築に真摯に向かい合っていることは確かなのだが、建築を哲学することが少なくなってきていることも事実だ。


「やっちゃった感」


この言葉を、新しい価値基準として建築を哲学し、建築の可能性について議論してみるのも面白いかもしれない。(まず、それを議論できる仲間がいるかどうかだが)

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使用例:とある見学会にて

あ~ぁ、やっちゃったねぇそのディテール。それをする事でどんな意味があるの?どこに可能性があるのかなぁ・・・?(さあ、あなたならどう答える?)



文責:進藤勝之-01963



2010年1月28日木曜日

『建築をめぐる22の寓話』トピック04


石川遼のいない建築界



弱冠18歳の若さで2009年のプロゴルフ賞金王に輝いた石川遼くん。数々の最年少記録を塗り替え、賞を総なめにしたのは記憶に新しい。以前から現役選手の中ではメディアへの露出度が圧倒的に多く知名度があったが、ここにきて名実ともにトップに立った。



華やかなウェアに身を包み、果敢に攻めるプレーで観客を魅了する。「ハニカミ王子」といわれた笑顔は爽やかで、記者への受け答えも謙虚で好印象。見て楽しませ、心に言葉が響く。国民的スターだ。



減少傾向にあったゴルフファンやゴルファー人口が、遼くんや女性プロの影響でふたたび増加していて、業界は活気づいている。子供ゴルフスクールの希望者も増えているらしい。親バカだと言われても子を持つ親としては、遼くんに重ね合わせて期待する気持ちがよく分かる。



建築家にも、魅力ある人はいる。奇抜だがセンスの良い服を着ている者もいる。イケメンもいる。しゃべりが上手で面白いヤツもいる。でも、残念ながら建築界にそこまでの活気はない。



なにが違うのか?

ゴルフをはじめスポーツは娯楽性が高く、興味を持つ人が多い。スターが出やすい環境にある。さいわい建築も奥深くて面白い。でも、それがうまく伝わっていないのが現状だ。



まずは簡単な言葉で語ろう。そして裾野を広げよう。そうすれば、興味を抱く人が増え、より活気づくはずだ。その環境が整って初めて、遼くんのようなスターが生まれるのかもしれない。建築界はその可能性を秘めている。



文責:中澤博史-1945



2010年1月27日水曜日

『建築をめぐる22の寓話』トピック03


師匠ー師弟論


私は学生から建築一筋ということではなく、全く違う世界から「建築」に宇宙人のごとくやってきました。

もとの世界は「映像」という世界です。18歳で訳も分からずその世界に飛び込んだ為、今でいう「就活」すら経験せずとりあえず「働かしてくれ~」状態でした。

業界用語の欠片も知らず身寄りのないこんな僕でしたが、心温かい人たちに支えられて少しづつ仕事にありつけていきました。

別に会社に属していませんでしたので、フリーの助監督のI先輩に大変かわいがってもらっていました。それこそまるで家族のようでした。


しかし、そこでの先輩との関係はあくまで「先輩-後輩」であり、兄さんのように慕っていたのです。訳があって映像の世界から、こちら(建築)の世界にやってきた時に設計事務所では所長のことを「先生」と呼ぶのでした。


初めはなんだか違和感がありましたね。

初めの事務所ではそう感じていました。


その後、その事務所をやめてなんとなく独立っぽくなっていた時に建築家のI先生との出会いと交流があり、そのアトリエの仕事を手伝うことになりました。


しかし、アトリエに入所ではなく、あくまで「助っ人」としてです。設計と現場監理までさせてもらい2年間ほど御世話になりました。

そこでのI先生との遣り取りは私の思いの強さだけかもしれませんが、「先生」と呼んで(I先生はさんでよいと言っていたが)、ある意味「師匠―師弟」の関係であった思います。しかし、このことは本当に気持ちのいいことで今でも大切にしていることです。


じゃあ独立する前、師匠がいないと困るのかといえば全くそんなことはないと言えます。だって会社でも尊敬する人が何人かはいるでしょう?(私は勤めていないので分かりませんが…)


やさしいだけじゃなく本当に尊敬できる人。


そのことが分かっていれば、なんてことない話ではないでしょうか。

また作風ということもありますが、そんなんどこかが似ていて当たり前だと思うし、それより師匠の何を「受け継ぐ」かの方が大事ですよね。絶対に弟子は師匠と同じにはなれないと思います。当然、自分の可能性にチャレンジするでしょう。


まあ、事務所によって違うかもしれませんけど。だから今から「心の師匠」を創ればいいのです。そういうことで安心あんしん。



文責:牧野高尚-01913


2010年1月26日火曜日

『建築をめぐる22の寓話』トピック02


勝手メディアの行きつく先は

私の勝手メディアとの出会いは、7.8年前。

ぽむ企画の「GA JAPANかんそう」や「建築家トーナメント」など「建築で遊ぶ」という趣向のものだった。ちょうど自身が社会に出て現実の仕事の中、建築で遊べなくなったころだ。そこには、ツイッターのような参加型の双方向なやりとりはないが、個人的には楽しかった記憶がある。

昨年の4月、建築学会の会報誌「建築雑誌」で「勝手メディアの台頭」という特集が組まれた。音声や動画メディアなどで建築を伝える新しい方法が、社会との接点を構築する可能性を秘めている。そのことが、特集となった理由だろう。メディアを使いながら、議論する環境または場をつくっているこの状況は、社会へ接続することへの「飢え」だとも考えられる。

戦後日本建築の歴史が、社会との関わりの歴史だとすると、このムーブメントも建築の歴史の中で1ページとして残る出来事なのかも知れない。

このムーブメントに積極的に参加していこうとする人、拒絶する人、黙って眺めている人、また新たにルールをつくり仕掛けていこうとする人・・・・。

厳しい淘汰の中で、残っていくのは「コトバ」なのかそれとも「モノ」なのか。

みんな同じに見えると言われる今の状況で、それぞれの立ち振る舞いで差異が表れてくるのではないか。そんな気がしている。

まさしく、「建築をめぐる22の寓話」も勝手メディア。
まずは「建築で遊ぶ」ことからはじめよう。


文責:森本雅史−01878


2010年1月25日月曜日

『建築をめぐる22の寓話』トピック01


建築設計事務所の開き方


建築設計事務所の開き方というWebとメールマガジンを独立前に立ち上げました。2003年頃のことです。当時はそういったジャンルのハウツウ本や解説本、ネット情報が皆無でした。だから独立するための様々なことがすべてが自力でした。まあ、当たり前ですが。。。。そんな状況の中、建築系ではなくサムライ業系の情報や企業・独立情報を知るにつれて、どの職種でも共通事項となる内容はハウツウ情報としてまとめあげたいと思ったのです。それも建築系寄りの内容で。


まあ、同じ思いの人も居るだろうと思ったのがきっかけです。


ある程度の情報を網羅した段階で書籍化を目指していたのですが同様の書籍が刊行されたこともあり、やめました。


今はそんな情報もあらゆるところで簡単に手に入りますし、建築家協会や建築士会などでも独立支援セミナー的なものも行なわれるようになり、自分も独立して一区切りがついた感があります。


本当のところ、そんな情報をまとめて公開することには抵抗がありました。


建築の巨匠が、建築家を目指す人向けに、事務所の開き方や建築ハウツウを情報公開しているか?自伝的なもの、作品解説やディテール集はあるけれど、ハウツウ情報本はなかったのです。だから建築を目指すこととはまったく違ったことをしている感があるように感じて抵抗がありました。


しかし、今は昔、ほんとうに小学生の頃、漫画家を目指していた頃ですが「石森章太郎の漫画家入門」や手塚治虫の書いた「マンガの描き方」をむさぼるように読んだのを思い出したのです。漫画界は巨匠もハウツウ本を書く。

『これだ!』と思いました。


同様の思いはあるようでそれ以降、時代の要請からか、2010年現在、『建築設計事務所の開き方』系の情報源は多く見られるようになりました。


よって僕は次のステップを目指します。




文責:筑波幸一郎-01835

2010年1月21日木曜日

『建築をめぐる22の寓話』トピック00


プロローグ


何を語ろうか。


言いたいことはいっぱいあるけれど、それらは支離滅裂で自己中心的、言えば言うほど自己嫌悪に陥りそうな、でも、多分、おそらく、多くの人の共感を得るのではないかと思う‘こと’と、まったく理解してもらえないだろう‘こと’と、その両極端になることは間違いないと思う。


先日、そういったことを拙い言葉で、気の置けない仲間たちに語った。

ようはヤキモチと羨望と意味不明な欲望が相まっていることが判明。

ただの欲望の塊が年齢とともに蕩け出したに過ぎなかった。でもまあ格好つけて語るわけでも、また語れるわけでもない。


ここいらで一度、そういったことをぶちまけてみようということが、僕自身の今回の企画展の始まり、きっかけだった。


ひとつだけ明快になっていることがあるとすれば真の意味での両極性を担った世代と感性が、心細げではあるけれど、唯一の自身となって支えになっていることだろう。

ほら、ここまできても何を言いたいのかわからないでしょう。

今回は

語りきれないことは絵を描くことで、描ききれないことは語ることで伝えてみようと思います。

究極は手を尽くした建築が語ってくれれば素敵だな。。。

でもいいんです。

まずは高架下の立ち呑みでぐだぐだ言っているおっさんの時折見せる真実の顔みたいなものがちょっとでも感じてもらえれば。。。。。

ということで、明日からほぼ毎日、

『建築をめぐる22の寓話』まで22のトピックを題材につまらない日常の視点から私的な真実を語っていきます。

乞うご期待。


文責:ちくばこういちろう-01770



2010年1月14日木曜日

twitterをヴィジェット化しました。

SCMA の twitter が随時SCMAブログでチェックできるようになりました。あっち見たりこっち見たりの煩わしい作業が、SCMAブログにアクセスするだけでチェックできます。

twitter で SCMA をフォローしていただき、気軽につぶやいてい頂くことも可能に!!

ブログのコメントとは違ったライトな感覚でコメントすることができます。

文責:SCMA-01664

2010年1月13日水曜日

イベント告知


トークセッションやります。
「建築をめぐる22の寓話」
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22の寓話から見えてくる
アラフォー建築家の過去と未来。
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この不況下、不況知らずで頑張る
5人の建築家の生き様をぜひ
「 楽しんでください 」
きっと何かがつかめるはず。
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「建築をめぐる22の寓話」
平成22年2月22日
アリアフィーナ大阪ショールーム
10:00~20:00 【企画展】
18:30~20:00 【討論会】

文責:SCMA-1625

2010年1月9日土曜日

100109_謹賀新年

あけましておめでとうございます。
ご挨拶が遅くなりましたが
本年もSCMAの活動を宜しくお願い致します。

2月22日にいよいよSCMAの活動第1弾としての企画展がおこなわれます。
近日中に告知を行なう予定です。

乞うご期待!

SCMAの活動のポータルサイトとなるWebサイト
でも情報発信をおこないます。
是非、ブックマークやリンクのほど宜しくお願い致します。

文責:SCMA-01595