『あだち充で大人の階段は昇れたか?』
「若松みゆきって、めっちゃカワイイで~」
「まだまだ子供やな~。オレは、鹿島みゆき!」
そんな会話を友達二人がしていたのは、小学校を卒業するほんの少し前。同級生にそんな名前の子はいない。聞くと、『みゆき』というマンガの登場人物だと教えてくれた。作者は、あだち充。清楚でしとやかな同級生「鹿島みゆき」と可憐で活発な義妹「若松みゆき」。この二人と、どちらからも好意を持たれる主人公とが繰り広げる青春ラブコメディだ。そのころの僕にとって、その内容はちょっと背伸びしたもので、どこか気恥ずかしく感じた。
その点、同じ作者の『タッチ』は、違った。ラブコメディという点では同じだが、それに野球がからむスポーツドラマでもある。肝心の試合のシーンなどほとんどないのだが、それでもスポーツがカモフラージュになって、堂々と見ることができるという微妙な差があった。この作品にも「浅倉南」という、これまた可愛い同級生が登場する。
どちらの作品も主人公は、一見したところなんの取り柄もないような普通の少年。そんな主人公だが、なぜか可愛い子にモテるのだ。異性を意識しだす年頃だから、当然、羨ましく思った。恋愛とは無縁で、取り柄もなかった僕に、「もしかしたら…」と微かな期待も抱かせてくれた。それに淡いお色気と、軽いお笑いが加わり、絶妙の間で話は展開していく。好きになるには、十分すぎた。
実をいうと、『みゆき』、『タッチ』ともにアニメ化されたのは、数年後のことで、そのほとんどはコミックで読んだ。でも、あだち充の作品を思うとき、なぜかアニメ『みゆき』のエンディングテーマが頭の中で再生される。
♪ 大人の階段昇る 君はまだシンデレラさ
しあわせは誰かがきっと 運んでくれると 信じてるね
少女だったといつの日か 想う時がくるのさ ♪
(『想い出がいっぱい』H2O)
子供から大人への階段は昇れたのか?
確実に昇り始めていた。
多分…、一段目くらいは……。
文責:中澤博史-004149
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